私のバスセンター 資料室


 こちらでは、路線バスを事業者ではなく、メーカーで違いを見てみようと思います。路線バスの特徴は、各事業者独自の塗装や仕様もありますが、メーカーや車体によって構造やデザインが大きく異なるものです。当サイトでも専門用語的な言葉が出てきてしまうので、分からなくなった時などに利用していただけると幸いです。しかし、未熟な者がまとめたものですし、分からないところや間違いなどもあるかと思いますが、ご了承願います。路線バスには大型車・中型車・小型車がありますが、当サイトで最も多く触れている大型車(一部中型車)に限定してまとめてみます。


 バスの「長さ」とは? バスを比較する上で重要なポイントです

 当サイトでしばしば出てくるバスの「長さ」とは、長手方向(前後方向)の長さを言っています。この長さは、各メーカーでそれぞれ3種類が用意されていて、当サイトでは、便宜上短尺・中尺・長尺という呼び方をしています。
 その「長さ」に深く関わってくるのが、「全長」や「軸間長(ホイールベース)」です。また、メーカー別の特徴になるのが、加えて「オーバーハング(前輪または後輪から外へ向かう長さ)」です。例えば、軸間が同じであっても、メーカーによって後のオーバーハングが違うので、見た目でも変わってきます。従って、バスの長さの違いをメーカー問わずおおざっぱに比べたい時は、軸間長を使うのが分かりやすいと思います。なお、「ノンステップバス」は、前扉が広くとってあるため、前のオーバーハングが大きくなり、ワンステップバスなどと比べると全長が長めになります。
 最近の事業者の動きを見ていると、長尺車といわれる長い車両はやめている事が多く、短尺や中尺の車両が多く選ばれています。

←軸間4.8mの「短尺車」を投入した事業者

軸間5.915mの「長尺車」を投入した事業者→


 メーカーについて 外見には車体メーカーが大きく関わります

 路線バス(大型車)を製造するメーカーは、エンジンやシャーシといった下廻りを製造するメーカーと車体を製造するメーカーの2つに大別できます。この両者が組み合わさってバスが造られるわけですが、この組み合わせにはある程度の法則があります。
 現在、車体メーカーは、系列化が進みジェイ・バスのように純正車を構成するメーカーだけになってしまいましたが、過去には西日本車体工業のように、あらゆるメーカーのシャーシに車体を載せる車体製造の専門メーカーも存在しました。下廻りのメーカーは、三菱ふそうトラック・バス、いすゞ自動車、日野自動車の3社が主で、一般に「バスのメーカー」という時はこれを指します。が、最終的な組み立てを車体メーカーで行うため、車体メーカーが「バスのメーカー」だという見方もあります。
 見た目に違いとして大きく見えてくるのは、やはり車体メーカーの違いでしょう。例えば、あらゆるメーカーのシャーシに全て西日本車体工業の車体を載せると、下廻りメーカーが何社もあるにも関わらず、見た目ではほとんど1種類に見えるという状態になります。逆に、いすゞ自動車の同じシャーシにジェイ・バスと西日本車体工業の2社で車体を載せると、下廻りは同じなのに誰が見ても2種類のバスに見えるということが起こってきます。
 純正車の特徴は、そのバスに愛称が付けられることです。現在製造されている車両(大型車)では、三菱ふそうトラック・バスが「ニューエアロスター」、いすゞ自動車が「エルガ」・「エルガハイブリッド」、日野自動車は「ブルーリボン」・「ブルーリボンハイブリッド」があります。

 なお、いすゞ自動車と日野自動車は相互にOEM供給(相手先ブランド供給)を行なっており、いすゞ自動車で「エルガ」として発売されているものを、日野自動車で「ブルーリボン」として、日野自動車で「ブルーリボンハイブリッド」として発売されているものをいすゞ自動車で「エルガハイブリッド」として発売しています。この場合、いすゞエルガと日野ブルーリボン、日野ブルーリボンハイブリッドといすゞエルガハイブリッドがそれぞれ並ぶと外見からの区別は困難ということになります。

 興味深い動きとしては、2007/5から西日本車体工業の解散まで日産ディーゼル工業(現:UDトラックス)から三菱ふそうトラック・バスへ大型ノンステップバスのOEM供給が行われました。日産ディーゼル工業では「スペースランナー」として発売されているモデルで、三菱ふそうトラック・バスでは「エアロスターS」として発売されました。大型ワンステップバスについては三菱ふそうトラック・バスの「ニューエアロスター」(足回りは日産ディーセル工業から供給)を日産ディーゼル工業へOEM供給し、日産ディーゼル工業では「スペースランナーA」として発売されました。なお、日産ディーゼル工業独自の「スペースランナー」(ワンステップバス及びノンステップバス)は西日本車体工業解散まで継続して製造されました。

 一時、2011/1からUDトラックスのバス部門と三菱ふそうトラック・バスの統合による合弁会社設立で、バス製造は下廻りから車体まで全て新合弁会社で行われる予定もありましたが中止されました。また、三菱ふそうトラック・バスからのOEM供給(スペースランナーA)も中止となり、UDトラックスは路線バス部門から撤退となりました。
 このため、当初発表された日産ディーゼル工業(当時)と三菱ふそうトラック・バスの相互OEM供給形態とは全く異なる結果となり、三菱ふそうトラック・バスの大型車は基本的にATのみの設定となるなど、最悪のシナリオとなりました。

現在路線バスを製造しているメーカー
下廻り 車体 メモ
三菱ふそうトラック・バス三菱ふそうバス製造大型はATのみ
いすゞ自動車ジェイ・バス大型はノンステ(AMT/AT)のみ
日野自動車ジェイ・バス大型はノンステ(AMT/AT)のみ、中型車の一部は走り装置をいすゞから供給
川重車体工業は1986年下期からアイ・ケイ・コーチへ移管されました。
北村製作所は1988年で路線バス製造部門から撤退しました。
呉羽自動車工業は1986年下期から新呉羽自動車工業へ社名変更しました。
新呉羽自動車工業は1993年下期から三菱自動車バス製造へ社名変更しました。
アイ・ケイ・コーチは1996年上期からいすゞバス製造へ社名変更しました。
三菱自動車工業(車体)は1996年下期で路線バス製造部門から撤退しました。
三菱自動車工業(下廻り)のバス製造部門は2002年下期の途中から三菱ふそうトラック・バスへ分割されました。
富士重工業は2003年上期でバス製造部門から撤退しました。
三菱自動車バス製造は2003年下期から三菱ふそうバス製造へ社名変更しました。
いすゞバス製造、日野車体工業は2004/10/01よりジェイ・バスに統合されました。
日産ディーゼル工業、三菱ふそうトラック・バスは2007/4より段階的に相互OEM供給を行うことになりました。
日産ディーゼル工業は2010/02/01よりUDトラックスへ社名変更しました。
西日本車体工業は2010/09/30で解散しました。
UDトラックスは2010年下期で路線バス部門から撤退しました。


▼「純正車」の例をメーカー別に示します。


▲三菱ふそうの「ニューエアロスター」(左)、いすゞ自動車の「エルガ」(右)


▲日野自動車の「ブルーリボンII」(左)、「ブルーリボンシティハイブリッド」(右)


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